糖尿病腎症はクレアチニンが低くても安心できない!

腎不全や人工透析にならないためにクレアチニン値に注意!

クレアチニン値が低ければ腎不全や人工透析の心配はないのか

確かに急性腎臓病のような急激な腎機能の低下がみられる疾患もありますが、人工透析が必要になるタイプの腎不全というと、どちらかといえば慢性腎臓病のほうがそのリスクが高いといえます。腎機能がどのくらいのレベルで悪化しているのか、あるいは正常なのかを知るための指標のひとつに、健康診断の血液検査で簡単に知ることができるクレアチニン値があります。

クレアチニンは腎臓で漉し出され、尿として排出されなければならない血中の老廃物なので、この数値が高いということは、腎機能が何らかの原因で低下していることが考えられます。それだけクレアチニンの数値は腎機能の状態を知るために有力な手がかりになるのですが、ところが、クレアチニン値が低くても安心できないこともあるのです。

糖尿病をすでに発病している人の場合、クレアチニンの値が低かったとしても安心できない場合が多いです。というのも、糖尿病が原因となって発症する糖尿病性腎症という症状は、クレアチニンの値がしばらく下がらないことがあるのです。特に、糖尿病が寛解(一時的に健常者と同様に生活できる期間)である人の血液検査で、クレアチニン値が低かったとしても、気づかぬうちに糖尿病性腎症を発症しているリスクもある程度想定しておいたほうがよいのかもしれません。

というのも、糖尿病性腎症の場合、しばらくはクレアチニン値が低値安定していても、あるとき突然急上昇をはじめることがあるからです。

クレアチニン値の急上昇は非常に危険

クレアチニン値に限らず、健康診断で測るさまざまな数値は、じっくり時間をかけて上昇したり下降したりするものです。ところが、糖尿病性腎症によるクレアチニン値の上昇は、想定よりもはるかに速いスピードで上昇することがあるのです。

クレアチニン値が急上昇するということは、もちろん単に数値だけが上がっているわけではなく、腎機能の低下が急激に進んでいることを意味します。腎機能が急激に低下するということは、急性腎臓病から腎不全へと移行するリスクが高まっていることを意味します。

急性腎臓病による腎不全の場合、自覚症状が起こりやすいことから、慢性腎臓病による腎不全にくらべると、治療によって人工透析のレベルにまで腎機能が低下することは多くはありません。ただし、糖尿病性腎症という病気の認知度が意外と低いため、治療が遅れてしまう患者さんもけっこういるというのが実際のところです。

それだけに、糖尿病の患者さんは、現状にかかわらず、小さな体調の変化に十分気をくばっていただきたいと思います。